JRには、複数の駅に同じ名前がついている組み合わせが少なからずあります。 この例だと、「福島駅」は福島県福島市のほかに、 大阪市福島区にもあります。
このような場合、 JRでは駅名の前に括弧書きで路線名などの略号をつけて表記しています。 今回の場合は、福島市の福島駅は「東北本線」の「北」の字をとって「(北)福島」、 大阪市のほうは「大阪環状線」の「環」をとって「(環)福島」としています。
現状はこの通りですが、要望が多ければもしかしたら将来、このような選択画面に 「福島市」「大阪市」といった注釈が出るようになるかもしれません。
MARS ではいまのところ、アルファベットや数字を含んだ駅名・路線名も読みで入力していただくことにしています。
「JRなんば」「くうこうだい2びる」「JRとうざい」 で直接入力できたほうがいいとは思っていますが、 将来の課題とさせてください。
これは、MARS for Windows ver 0.12 までのバグです。 Ver 0.13 で修正されていますので、バージョンアップをおすすめします。
なお、過去の運賃を計算するためにどうしても旧版で 「ガーラ湯沢」を入力したいという場合は、 先頭の「が」の1文字だけを入れて Enter キーを押すと、 「が」で始まる駅の一覧が出ますので、その中から選択してください。
確かに、特急料金も一緒に出せるようにしたいとは考えています。
しかしながら、問題は山積です。二つほど例を挙げます。
①たとえば、「宇都宮→(新幹線やまびこ)→東京で乗換→(新幹線のぞみ)→途中で乗換→(特急はるか)→関西空港」のように、 乗車券は1枚になるのに特急券は複数になる、というケースがあります。 加えてこの例では、京都・新大阪のどちらの駅でも 〔のぞみ〕から〔はるか〕へ乗り換え可能なので、 ユーザーにどちらの駅で乗り換えるのかを確認する必要があります。
さらにこのルートでは、片道ではなく往復の場合に、 「往路(関西空港行き)では〔はるか〕の始発駅・京都で乗り換えたい、 でも復路(宇都宮行き)では〔のぞみ〕の始発駅・新大阪で乗り換えたい」 といった需要もありえます。
②JRの路線の中には、 「一定の条件下では同じ区間を往復してもよい」 ということになっている箇所があります。たとえば、 定期券の計算のときに見た、東京駅での折り返しのケースでも、 定期券の場合は2つの区間に分割して購入する必要がありましたが、 普通乗車券であれば、 1枚の乗車券で、「東京駅まで中央線の特急でやってきて、 そこから京浜東北線へ」という乗車が可能です。
この場合、乗車券を計算するときには「神田→東京→神田」 のキロ数はノーカウントになります。 つまり、乗車券は「→(中央線)→神田→(東北本線)」 という形で発行されるので、東京駅を経路上に含みません。
また、この例題の冒頭で見たように、赤羽よりも先へ行く場合には、 普通乗車券は、新宿→赤羽間を埼京線でショートカットして計算します。
一方、中央線の特急には東京駅まで確かに乗るので、 この特急料金は東京駅までの距離で計算します。 このように、乗車券と特急券の区間に齟齬がある場合に、 ユーザーにどんな形で入力してもらうか、これから詰める必要があります。
また、特急料金には、2本以上の列車を乗り継ぐ際、一定の要件を満たすと 「乗継割引」という制度の対象になることがあります (上記の〔のぞみ〕⇔〔はるか〕も乗継割引の対象になります)。 この制度も色々と複雑になってきているので、それへの対処も必要です。
というわけなので、長い目で見ていただければ幸いです。
私鉄・地下鉄を全国レベルでサポートするためには、 各路線のキロ数などの基本データに加えて、時々刻々と改訂される運用ルール (約款など)をリアルタイムで調査しつづけ、 それをMARSに反映させ続ける必要があります。
しかしながら、 インターネット上で約款などをすべて公開している会社は少数派です。 JRですら、「旅客営業規則」は一般公開しています(→JR東日本のサイトへ)が、 細かいルールを定めた「旅客営業取扱基準規程」 (JR東海では「旅客営業規則取扱細則」と称していますが、同じものです) は大っぴらには公開していません。
例外的に、地方自治体が直接経営する路線では、 約款はその自治体の条例や通達という形をとるので、 市議会のホームページなり情報公開制度なりで調べることができますが、 もちろんそれは例外です。
そして、小規模な会社の場合、そもそもホームページがなかったり、 制度変更の告知が現地のポスターだけだったりということが多々あります。
こういう状況ですから、本気で取り組もうとしたら、 専属スタッフを雇うための人件費と、 そのスタッフが全国を回るための出張旅費だけで、 毎年何百万円という経費がかかるでしょう。
地下鉄・私鉄も網羅している他のサービスではどうしているのか、 と考えてみると、どこもきちんと資金源があることがわかります。 「駅すぱあと」にはパッケージソフトの売上がありますし、 Yahoo!やナビタイムなどは、 有料会員からの会費と、多くの広告とで開発費用を捻出しています。
しかしながら、我々はMARS自体をシェアウェアにはしたくないので、 初期投資の必要な私鉄・地下鉄対応は行わない、ということにしています。
昔、年号が昭和から平成に変わる前後あたりに、富士通が「OASYS(オアシス)」というワープロ機を世に出していました。
とにかく速いスピードで文字を打ちたい、 という人たちに人気を博していたのですが、実はこのOASYS、 仮名漢字変換の際に自動学習を一切行っていませんでした。 つまり、読みを入力して変換キーを押しても、 最初にメーカーが決めた順番で候補が出てくるため、自分が頻繁に使う単語を出すためには何回も変換キーを押さなければならない、 というありさまでした。 素人目には、「学習して頻出単語が先に出てくれたほうが、 変換キーを押す平均回数は少なくなるのでは?」と思いますよね。
ところが、この「順序は固定」という設計は、 速度向上にとって思わぬ利点となりました。 たとえば、「いがい」という読みで変換キーを押すと常に「以外」→ 「意外」→「遺骸」という順番で出てくるようになっていたとしましょう。 そうするとたとえば、「意外」を出したいと思ったときには、 「い か ゛ い」と入力してから変換キーを2回押し、画面に「意外」 が表示される前にEnterキーを押してしまうことができたのです。
このように、画面などの反応を待たずにその先の操作を先に行うことを、 先行入力といいます。先行入力ができるかどうかは、 色々な場面で、利用者の使いやすさを大きく左右します。
最近では、さまざまな業者の専用電話番号をダイヤルして、プッシュトーン (ピ・ポ・パ、という音)で何かを依頼する、ということがよくありますが、 頻繁に使う業者なのに先行入力ができない番号にかけるときには、 実にフラストレーションがたまります。
MARSでも事情はよく似ていて、でるもんた・いいじまの場合、 今までさんざん例示してきた「路線名を右側の一覧でさがして Shift+英字」という操作はあまりしません。 大抵の場合は、路線名を仮名やローマ字で直接打ち込んでいます。
もうひとつ付け加えると、MARSで駅名や経路を尋ねる際に、 候補数が10を超えることは滅多にありません。 そして、番号を振ってあるので、 10件以内ならテンキーを1回押すだけで特定の候補を選択できます。
例外的に、 新幹線と在来線との乗換駅を指定する際には多数の候補が出ますが、 これは、駅の並んでいる順番に固定するほうが、 なまじ利用順にするよりはわかりやすくなるはずです。
もちろん、最上位の3つだけ利用順にして、 その下は始発駅からの並び順にする、という設計も考えられるのですが、 現状、ここの部分だけ手を入れるというのは、 労力に見合わないと考えています。
そしてここが最も重要なのですが、 MARSは時刻表の情報を搭載していません。 そのため、同じ経路を何度も計算するということが滅多にありません。
一般的な経路探索ソフトでは、たとえば 「ちょっと寝坊しちゃったけど、いつものルートで間に合うかな? それとも途中でタクシーを使ったほうがいいかな?」 ということを調べるために、Yahoo!などのサイトで検索することがあります。 実際、でるもんた・いいじまもそういうサイトを複数使っています。
ところが、MARSには時刻の情報がないので、 たとえば「東京→名古屋、新幹線経由」と入力しても、 次の〔のぞみ〕が東京駅を何時何分に出るのかは表示しません。 早朝に入力しても、夕方に入力しても、 あるいは新幹線の走っていない深夜に入力しても、 出てくるのはキロ数と運賃だけです。したがって、 同じ経路を毎日のように入力する、ということは想定に入っていません。
逆に、MARSの計算能力が活きる主な用途は、 次のような疑問の解決ということになるでしょう。
そうすると、毎回のように同じ駅名を入力する需要は、 自宅・学校・職場の最寄り駅くらいしかないように思います。
2015年現在、Yahoo!の経路探索では、経由地は3つしか入力できません。
一方、MARSでは、好きな数だけいくらでも経由地点を指定でき、
その通りの運賃を計算できます。
そもそも、MARSが産声を上げた1994年には、経由地を複数指定して検索する機能はどこの計算ソフトにも存在しませんでした。 今はYahoo!やナビタイムが3地点まで対応していますが、この先、 無制限になることは考えにくいでしょう。
例えば、「池袋→(山手線)→東京→(新幹線)→新神戸」という経路を、 複数のサイトで計算して、比べてみてください。
たとえば、Yahoo!は「601.8km」という数字を出します。そうすると、 一見したところ往復割引の対象になるように見えます(「新大阪→空港第2ビル」の議論を参照)が、 実際には池袋→東京間の距離12.3kmはノーカウントであり(「池袋→名古屋」の議論を参照)、 残った東京→新神戸のキロ数は589.5kmなので、 往復割引の対象にはなりません。
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