あなたは大阪に住んでいて、海外出張を控えています。 関西空港からのフライトがあればいいのですが、 探したところ見つかりません。関西空港から国内線で羽田に飛んで、 そこから乗り継げればいいのですが、もう出発日が迫っており、 安いきっぷが手に入りません。
仕方ない、成田まで行くか。 JALだからターミナルは第二。 5日後には帰ってくる。国際線は何日という単位でスケジュールが狂いかねないから帰りの新幹線の指定席はとれないけど、あとは往復でまとめて買ってしまおう。
発駅は「新大阪」、着駅は「空港第2ビル」、経路は新幹線からN'EX…。
片道乗車券は有効5日。往復はその倍の10日ですから、十分間に合います。
おや、「往復割引運賃」とあります。何割安くなったのでしょう?
(17280円÷2本)÷9610円=0.899...どうやら1割引のようです。逆算してみると、
9610円×0.9=8649円→端数を切り捨てて8640円となっています。
8640円×2本=17280円
この「往復割引」というのは、片道あたり600.1km以上の乗車券を往復で買うと、 上記のように自動的に1割引になるという、長距離客にとってありがたいシステムです。
さて、出発間近のある日。JALのサイトを見ていたら 「大特価!直前売れ残りバーゲン」(注)の文字が。 羽田発の深夜便が、座席が埋まらないということで急遽半額になったのです。 高価な国際線、先に買った航空券をキャンセルしても十分にペイします。
(注)このキャンペーンは架空のものです。もっとも、過去には全日空の国内線で「突然割引」というキャンペーンが行われたことがあります。
再計算。新幹線で行くから、品川から京浜急行で羽田に向かうことにしましょう。発駅「新大阪」、着駅「品川」、経路は新幹線。
…なんということでしょう!!往復運賃が成田行きよりも高くなってしまったではありませんか。 N'EXの特急券が要らなくなったとはいえ、これは困りました。
でも、考えてみれば当たり前です。大阪駅→東京駅のキロ数は556.4km。 ぎりぎり600.1kmに満たないため割引が効かず、 成田までの往復割引運賃の片道単価8640円よりも高くついてしまったのです。
でも、JRの乗車券には「途中下車」という制度があります。有効2日以上の切符 (大都市近郊区間内で完結するもの以外で、片道100.1km以上の切符。回数券は不可) では、途中の駅で降りて、またその駅から入って続きを乗ることができます。 これをそのものずばり「途中下車」と称します。
きっぷを見ると、有人窓口で途中下車したことを示す、 駅名が書かれたスタンプが見て取れます。
(自動改札機を通ることもできますが、その場合は駅名は印字されません。 ちなみに、赤色で印字された「米原 入」「京都 出」は、 新幹線乗り換え改札を通ったことを示しています。)
逆に、有効1日の切符には、「下車前途無効」と書いてあります。 途中駅で降りたらそこで切符は回収されてしまって、それ以上は乗れないのです。 でも、金額が足りていれば、途中駅で出ることはできます。 これを「前途放棄」と称します。
この切符は本来、綾瀬駅の自動改札機の中に消えていく運命だったのですが、 駅員さんにお願いして記念に持って帰ってきました。 「無効」のスタンプだけではなく、自動改札機でも再度使えないようにするために、 パンチ穴があけられることもあります。
ということは、既に買った空港第2ビルまでの切符はそのままにして、 品川で途中下車し、往路の切符はそのまま捨ててしまえばいいのです。
え?復路は成田まで行ってから乗らなきゃいけないんじゃないかって? これも心配無用、途中の品川から乗ることができるのです。 これを「内方(ないほう)乗車」「途中乗車」「中途乗車」などと称します。
まあ、帰ってくるときに羽田空港でトラブルが発生して、 急遽成田に着陸する可能性が否定できませんので、 きっぷは保険としてそのまま手元に持っておくのが無難でしょう。
こう考えてみると、東京から関西に向かう場合にも、素直に大阪市内行、 ましてや神戸市内行(589.5km)の切符を買うのが馬鹿らしくなってきます。 大阪のミナミが目的地なら和歌山行き、 神戸界隈が目的地なら西明石までの切符を買うのがいいでしょう。 (特急券は実際に乗る駅までにしてください。特急料金に往復割引はありません。)
もちろん、出発地がたとえば千葉の場合は、神戸までで628.8kmありますから、 普通に神戸市内まででかまいませんし、 千葉から和歌山まで行くと高くなりますから手前で止める必要があります。 下記の経路は総武線快速で品川に出るルートです。
(ちなみにお気づきかと思いますが、在来線の「東海道本線」と 「山陽本線」の境界は大阪ではなく神戸です。 新幹線は「まず東京〜新大阪をオリンピックまでに建設しなければ」 という事情がありましたので、新大阪までを「東海道新幹線」、 後年になって建設された新大阪以西を「山陽新幹線」と称します。 経営母体も新大阪以東がJR東海、新大阪以西がJR西日本です。)
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