「通算」と「合算」は、「通過連絡」 というJRの制度を利用する際の運賃を計算する機能です。 通過とは、「JR→他社路線→JR」と乗り継ぐことで、 歴史的には、次の2種類の経緯によるものが多いようです。
もちろん、これに当てはまらないケースもいくつかあります。 たぶん、以下で紹介する常磐線の例はそういう一例でしょう。
しかしMARSでは、すべての会社との通過連絡を網羅的にサポートしてはいません。 通過する会社によって細かいルールが異なり、 それを正確に調べつくすことは事実上不可能だからです。 その代わり、MARS for Windows(注)では、 他社路線を通過する前後のキロ数を別々に計算してから、 キロ数なり運賃なりを合計する機能が備わっています。
(注)これから紹介する「通算・合算」 はWindows版のみの機能で、今のところMARS for MS-DOSにはありません。 将来どうするかは未定だそうです。
例として、常磐線金町駅から、山手線有楽町駅に出ることを考えます。
金町付近の常磐線は、快速電車(および特急・貨物などの長距離列車) と各駅停車とが別々の線路を走っています。 金町駅には各駅停車しかホームがありません。
そして困ったことに、各駅停車は金町の3つ先の北千住駅から、 地下鉄千代田線に乗り入れます。 千代田線は、その先の西日暮里駅で山手線と交わっています。
金町から有楽町に出る場合、JR線のみで行こうとすると、 まず北千住で快速に乗り換えて、 日暮里〜東京間のどこかの駅でさらに山手線に乗り換えないといけません。 この乗り換えは、北千住ではエスカレーターがないため長い階段を下る (有楽町→金町の場合には上る)、西日暮里・上野・東京の各駅ではホーム自体は平行線になっているものの離れている、と、体力を要します。
そこで、金町やその次の亀有から東京・有楽町方面に出るときには、 各駅停車・地下鉄線直通便で西日暮里まで出て、 そこから山手線に乗り換えるのが一般的です。 このとき、金町→北千住は170円/IC165円、北千住→西日暮里は170円/IC165円、 西日暮里→有楽町も170円/IC165円ですので、合計すると510円/IC495円。 北千住から快速に乗り換えた場合の310円/IC302円と比べて、 実に6割増の金額になってしまいます。
そのため、この区間を通る場合には、2つの特例が設けられています。
まず、金町→西日暮里→有楽町というきっぷ(通過連絡乗車券) をあらかじめ買う場合には、 金町→北千住6.6kmと西日暮里→有楽町7.1kmを合計した13.8kmを運賃表で索いてJR運賃は220円とし、これに地下鉄の運賃170円を足して、 都合390円とします。一方で、ICカード(Suicaなど)で金町から入り、 西日暮里の乗り換え改札を通って有楽町で降りた場合には、 上記の165円×3から特例として100円を差し引いて、395円とします。
紙の連絡乗車券とICカードのどちらが安くなるのかは、 ケースバイケースです。 Suicaが世に出た当初はJR以外の路線に拡張することまで頭が回らなかったせいか、 上記のような「賢い」ことができなかったのでしょう。 そもそも、IC運賃は1円刻みなので、10円単位に丸められている紙の運賃とは、 どうしてもいくらかの違いが出ます。
前置きが長くなりました。こういうときに使うのが、MARS for Windowsの 「通算」「合算」機能です。使ってみましょう。
まず、出発駅に「かなまち」、 到着駅に「ゆうらくちょう」と入れて、 経由路線を全く入力せずにEnterキーを押します。
経由駅を訊かれました。岩沼は仙台空港そばの駅ですので、 日暮里を選ぶしかありません。日暮里は快速線だけの駅なので、 これは北千住で快速に乗り換えた場合の運賃と分かります。 (日暮里からの山手線は京浜東北線・東北新幹線が並走しているため、 MARS内部では東北本線として扱います。)
さて次に、地下鉄線・西日暮里駅経由の運賃を計算してみましょう。
上記の画面からEscキーで戻って、 着駅に「きたせんじゅ」と入れます。 経由のところに既に入っている「東北」「東海道」 はDeleteキーで削除します (そうしないと、上記の岩沼駅まで行くことにされてしまった上で、 「再考 経路重複」というエラーになってしまいます)。 6.6km、170円/IC165円と出ました。 この結果ウインドウで、「メモリ1」に計算結果を保存しておきましょう。
Escキーで戻ります。 発駅に「にしにっぽり」、 着駅に「ゆうらくちょう」と入れて、 「常磐」も削除し、Enter。
7.1km、170円/IC165円と出ました。「メモリ2」に保存しておきましょう。
ここで、保存ボタンの隣の「メモリ一覧(M)」をクリックします。 次のようなウィンドウが開きます。
ここで、保存した2つのメモリをチェックして、下の「の距離を通算(T)」 をクリックします。13.8km、220円という計算結果が出ました。 地下鉄の170円を足すと確かに、売価の390円になっています。
Escキーで戻って、 今度は「の運賃を合算(G)」をクリックします。 当然、合計額の340円/IC330円が表示されます。この330円に地下鉄の165円を足して (残念ながら、MARSでは地下鉄までの合算はサポートしていません)、 特例額の100円を引くと、ICから差し引かれる395円になりました。
この例では紙のきっぷのほうが安くなりましたが、 IC運賃のほうが安くなるケースも存在します。たとえば、新松戸→池袋だと、 紙560円に対してIC521円と、とんでもない差が出ます。 (ご自身で計算してみてください。)
…もっとも、乗り換えの手間をかければ、 途中の松戸駅で快速に乗り換えるのがいちばん安く上がります。 これはそれほど大変な乗り換えではありません。
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